前の記事で、無料のGoogleアカウントを会社で使うことは規約で禁止されていないこと、それでもアカウントが会社のものにならない点で困ることを書きました。この記事では、その先の「では、うちはどうすればよいのか」を書きます。Google Workspaceが向いている会社と、まだ無料のままでよい会社の分かれ目です。前の記事はこちらです。
IT導入無料のGoogleアカウントを会社で使ってはいけないのか
判断の目安は自分以外が触るかどうかです
いろいろな基準がありますが、私が実際のご相談で使っている目安は一つです。会社のメールやファイルを、自分以外の人に触ってもらうかどうかです。
社長一人なら、アカウントが誰のものかという問題は起きません。自分のものです。辞める人もいません。ところが社員が一人入った瞬間に、その人のアカウントが会社のものかどうかが問題になります。パートでも、外注の事務代行でも同じです。
社員の数で線を引く人もいますが、私は人数で決まるものではないと思っています。二人の会社でも、一人が辞めたときにメールが持ち出されたら困ります。逆に、10人いても、メールやファイルを社内システムだけで扱っていて個人のアカウントを使っていないなら、当面は困りません。
社長一人の会社は無料でも困りません
一人で仕事をしている段階では、無料のGoogleアカウントで十分だと思います。メールもカレンダーもドライブも一通り使えますし、容量が足りなければ個人で買い足せます。
気にするとすれば、次の2点です。
一つは、メールアドレスが@gmail.comであることです。業種によっては、取引先から「フリーメールのアドレスでは登録できない」と言われることがあります。銀行や行政の手続き、大手との取引口座の開設で引っかかりやすいです。
もう一つは、仕事の連絡と私用の連絡が同じアカウントに混ざることです。いまは困らなくても、あとで誰かに引き継ぐとき、私用のメールと仕事のメールを分ける作業が発生します。
この2点が気になり始めたときの選択肢に、Google Workspace Individualがあります。個人事業主や一人で事業をしている人向けの有料プランで、2026年9月時点の公式サイトでは月額1,900円と表示されています。ただし、これは個人のGoogleアカウントに機能を足すプランで、自社ドメインのメールは使えません。@gmail.comのままで、会議の時間制限がなくなり、予約受付の機能と容量が増える、という位置づけです。自社ドメインのメールが欲しいなら、次に説明するBusinessプランが必要です。
社員がいる会社はBusiness Starterが基本です
自分以外の人が会社のメールやファイルを触る段階になったら、Google WorkspaceのBusinessプランを勧めています。いちばん安いBusiness Starterは、2026年9月時点で公式サイトに載っている料金が1人あたり月額800円(税別・年契約)です。金額は変わることがあるので、契約前に公式の料金ページで確かめてください。
このプランで手に入るのは、機能というより会社としての管理権です。
- 自社ドメインのメールアドレスを社員に配れる
- 退職者のアカウントを止め、メールとファイルを別の社員に引き継げる
- 2段階認証を全員に必須にできる
- 社外へのファイル共有を会社の設定で制限できる
- 問い合わせ窓口のあるサポートを受けられる
月800円をどう見るかですが、10人で月8,000円です。社員が一人辞めるたびに取引先のメールが行方不明になるリスクと比べると、私は安いほうだと思います。
毎日の事務の手作業を自動にする仕組みも、このプランから上限が大きくなります。何が自動にできるかは、こちらに書きました。
業務改善Google Workspaceで事務の手作業を自動にできます
なお、Starterは1人あたりの容量が30GBです。写真や図面を扱う会社は早く埋まるので、ご相談ではStandardを基準にすることが多いです。プランの選び方はこちらに書いています。
IT導入Google Workspaceのプランと費用の考え方
メールが別にある会社には無料のプランもあります
あまり知られていませんが、Google WorkspaceにはEssentials Starterという無料のプランがあります。条件は、自社ドメインのメールアドレスをすでに持っていることです。@gmail.comでは登録できません。
このプランにはGmailが含まれません。メールは今のままで、ドライブとドキュメント、Meetだけを会社として使う、という形になります。共有ドライブや管理機能の一部も使えません。
向いているのは、メールはプロバイダやレンタルサーバーのものを使い続けていて、当面はそれで困っておらず、ファイルの共有と会議だけ整えたい会社です。ここから始めて、メールも移したくなったらBusinessプランに上げる、という進め方ができます。
Essentials Starterでできることと、無料ゆえに残る問題は、こちらに詳しく書きました。
IT導入無料のEssentials Starterでできることとできないこと
ただ、メールが別にあると、データは二か所に分かれたままです。生成AIにメールと文書の両方を参照させたいなら、最初から一か所にまとめるほうが後が楽です。その理由はこちらに書いています。
生成AI活用生成AI時代にGoogle Workspaceを勧める理由
Google Workspaceが向かない会社もあります
Google Workspaceを勧めない場合もあります。
マクロ付きのExcelが業務の中心にある会社や、取引先と複雑な書式のExcel・Wordファイルを日常的に交わしている会社は、Microsoft 365のほうが素直です。すでにMicrosoft 365が入っていて不満がないなら、乗り換える理由もありません。
また、社員のほとんどが現場にいてパソコンを使わない会社では、全員分のアカウントを契約しても使われません。この場合は、事務と管理職の分だけ契約して、現場は別の連絡手段のままにするほうが現実的です。Google WorkspaceとMicrosoft 365の判断軸は、こちらに整理しています。
IT導入中小企業のGoogle WorkspaceとMicrosoft 365の選び方
無料から切り替えるときは順番があります
無料のGoogleアカウントで何年か仕事をしてきた会社が切り替えるとき、つまずきやすい点が3つあります。
一つ目は、過去のメールとファイルの引っ越しです。個人のアカウントの中身は自動では移りません。個人のアカウントから会社のアカウントへ、メールを転送し、ファイルの所有者を移す作業が要ります。人数が多いほど手間がかかるので、まず数人で試してから広げるのが安全です。
二つ目は、メールの切り替え日です。すでに自社ドメインのメールをレンタルサーバーなどで使っている会社なら、アドレスは変わりません。ドメインの設定を切り替えた時点から新しい場所に届くようになるので、その日を決めて、前後の数日は両方を見ておきます。@gmail.comで仕事をしていた場合はアドレスが変わるので、主要な取引先には事前に伝え、旧アドレスに届いたメールを一定期間は転送しておきます。いまのメールがどこで動いているか分からない場合は、先にこちらで確かめてください。
IT導入会社のメールはどこで動いているのか、4つのパターンと確かめ方
三つ目は、権限の設定です。誰がどのフォルダを見られるかを決めてから使い始めます。あとから絞るより、最初に決めるほうが簡単です。
そして、これらの前に確かめておくことが一つあります。自社のドメインを誰が持っていて、管理画面に誰が入れるかです。ここが分からないと、メールを移す作業に入れません。
IT導入会社のドメインは誰のものか、名義と管理画面の確かめ方
迷ったら今の困りごとから考えてください
Google Workspaceを入れるかどうかは、機能の一覧を見比べても決まりません。いま何に困っているか、これから誰に会社のメールやファイルを触ってもらうかで決まります。
一人で困っていないなら、無料のままで構いません。社員が入る、外注に事務を頼む、生成AIを社員に使わせる。そのどれかが見えてきたときが、切り替えを考える時期だと思います。
グレジャーでは岡山を中心に、香川・広島・徳島・鳥取・兵庫も含めて、Google Workspaceの導入から社内への定着までをお手伝いしています。ライセンスは販売していないので、無料のままでよい場合はそうお伝えします。いまの使い方を伺いながら、どれが合うかを一緒に整理できますので、まずは現状をお聞かせください。

