Google Workspaceの導入をご相談いただくとき、「メールと文書のツールを入れ替えたい」という話から始まることが多いのですが、生成AIが業務に入ってきた今、価値の中心は別のところに移りつつあります。それは、社内のデータが自然に一か所へ溜まり、それをそのまま生成AIに使わせられるという点です。この記事では、その理由と、従業員に使ってもらうときに欠かせないガバナンスの話を整理します。

生成AIの答えの質は、参照できる社内データで決まる

生成AIを試した会社からよく聞くのが、「一般論しか返ってこない」という感想です。原因の多くは生成AIの性能ではなく、参照させる材料がないことにあります。

自社の見積書の書き方、過去の提案の経緯、取引先とのやり取りの背景。こうした情報を踏まえた答えを求めるなら、その情報がどこかにまとまっていなければなりません。逆に言えば、材料さえ揃っていれば、同じ生成AIでも返ってくる内容は大きく変わります。

つまりこれからの数年は、生成AIそのものを比較するより、自社のデータがどこに、どんな形で溜まっているかのほうが業務への効き方を左右します。

データが「溜まる」場所を一つにする

中小企業の現場でよく見かけるのは、データが散らばった状態です。

  • 見積や請求は各自のPCのフォルダにある
  • 経緯はメールの中にしかなく、担当者しか分からない
  • 共有ファイルはファイルサーバーとクラウドの両方にあり、どちらが最新か曖昧

この状態では、生成AIに何かを任せようとするたびに、人が資料を探して貼り付ける作業が発生します。それでは手間が減りません。

Google Workspaceを勧める理由の一つは、普段どおり仕事をしているだけでデータが一か所に溜まっていくことです。文書も表計算もブラウザ上で作り、共有ドライブに置けば、それは個人のPCではなく組織のものとして残ります。メールもカレンダーも同じ基盤の上にあります。特別な「データを溜める作業」を誰かに課さなくてよいのが、続けやすさにつながります。

溜めたデータを、そのまま使えるかどうか

溜まっているだけでは足りません。次の分かれ目は、それを生成AIからそのまま参照できるかです。

データを別のサービスへ都度コピーして貼り付ける運用は、手間がかかるうえに、社外へ出してよい情報の判断を個人に委ねることになります。同じ基盤の中で生成AIが動くなら、その人が本来アクセスできるファイルの範囲で参照させられるため、コピーする手順自体が不要になります。

「文書の下書きをする」「長いやり取りの経緯をまとめる」といった作業が、資料を探すところからではなく、いま開いている画面から始められる。この差は日々の業務では小さく見えますが、使う頻度が上がるほど効いてきます。

なお、こうした生成AI機能は上位プランや追加ライセンスでの提供が中心です。全員分を契約すると月額の水準が変わるため、まず使う人を絞って試す前提で見積もることをおすすめします。

経営者ひとりで使うなら、一般の生成AIで十分です

正直に書くと、経営者ご自身が使うだけであれば、市販の生成AIサービスをそのまま契約するのがいちばん手軽です。入力してよい情報の線引きも自分で判断できますし、月額も限られます。

問題になるのは、従業員に使ってもらう段階です。ここから話が変わります。

  • 誰がどんな情報を入力しているかを、会社側が把握できない
  • 各自が個人のアカウントで契約を始め、業務の記録が個人資産になる
  • 退職時に、その人が作ったやり取りや資料が会社に残らない

一人で使う分には気にならないことが、人数が増えると管理の問題として表に出てきます。

ガバナンスは、禁止ではなく「安全に使える範囲を用意すること」

生成AIの社内利用を心配して、「当面は禁止」としている会社もあります。気持ちは分かるのですが、禁止すると個人のアカウントでの利用が水面下で進むだけになりがちです。

会社の基盤の上で使う形にしておけば、管理者側で次のようなことができます。

項目 会社としてできること
利用範囲 部署ごとに機能のオン・オフを切り替え、試す範囲を絞れる
情報の見える範囲 フォルダやファイルの権限がそのまま反映され、見えない情報は参照されない
記録 誰がいつ何にアクセスしたかを管理画面で確認できる
退職時 アカウントを止めても、業務データは会社に残る

大事なのは、権限設計を先に整えておくことです。共有フォルダの権限が雑なまま生成AIを入れると、本来見せるべきでない情報が検索や要約の形で表に出やすくなります。順番としては、権限の整理が先、生成AIの活用が後です。

向かない場合もあります

一方で、Google Workspaceが最適とは限らない会社もあります。マクロ付きExcelが業務の中心にある、取引先と複雑な書式のファイルを日常的にやり取りしている、といった場合は、無理に移すと日々の小さなストレスが増えます。すでにMicrosoft 365が入っていて不満がないなら、乗り換えのコストに見合わないことも多いです。

この記事で申し上げたいのは「Google Workspaceに移すべき」ということではなく、どちらを選ぶにせよ、データが一か所に溜まる形にしておくと生成AIが効くということです。判断の軸はGoogle WorkspaceとMicrosoft 365の比較記事にまとめています。

まず、データの置き場所から考える

生成AIの活用でつまずく会社の多くは、ツール選びではなく、参照させる材料が散らばっていることでつまずいています。土台を整えるほうが先で、そこが整えば、後から出てくる新しい機能も素直に使えます。

弊社はライセンス販売をしない立場で、岡山を中心にGoogle Workspaceの導入と、その上での生成AI活用をお手伝いしています。自社の場合はどこから手を付けるとよいか、現状のファイルの置き方を伺いながら一緒に整理できます。

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