生成AIを導入したのに社内で使われない、というご相談をいただくことがあります。アカウントを配って研修もやったのに、実際に開いているのは数人だけ。利用料だけが毎月出ていく状態です。これは珍しいことではなく、むしろよくある通り道だと思っています。原因のほとんどは、道具の選び方ではありません。
使われない理由はたいてい道具ではありません
この状態になると、別のサービスに乗り換える案が出てくることがあります。ただ、道具を替えても同じところで止まることが多いです。
「便利だから使ってみて」と言われた社員の側から見ると、渡されたのは白い入力欄がひとつあるだけの画面です。何を書けば何が返ってくるのか、それが自分の仕事にどう関係するのかが分からないまま、忙しい日常に戻っていきます。使わないのは、やる気の問題でも道具の性能の問題でもありません。
自分の仕事とつながっていないまま渡されています
研修で「文章が書ける」「長い資料を要約できる」と聞いても、そこから明日の自分の担当業務へは、なかなか翻訳されません。一般的な使い方の説明と、目の前の仕事の間には、思っているより距離があります。
逆のことも経験しています。セミナーで、その場にいる方の業種を聞いて、実際にありそうな仕事を題材に動かして見せると、反応がはっきり変わります。説明を足したわけではなく、題材を変えただけです。この感覚は生成AIセミナー・研修の登壇実績と、現場でよく受ける質問にも書きました。「自分の仕事に引き寄せて考える時間があったかどうか」で、持ち帰れるものがまるで違ってきます。
何を入れてよいか決まっていないと手が止まります
もうひとつ多いのが、線引きが決まっていないまま配られている状態です。
入れてよい情報の範囲が分からないと、慎重な方ほど手が止まります。一方で、気にしない方は気にせず使います。結果として、使わない人と、会社が把握できない使い方をする人に分かれていきます。どちらも、会社としては困った状態です。
決めごとが足りていない気がする場合は、生成AIの社内ルールをつくるとき、見落としやすいこともあわせて読んでみてください。長い規程は要りません。入れてはいけないものを数行で決めるだけでも、手が止まらなくなります。
最初の一つは経営者が決めたほうが早いです
ここがいちばん大事なところだと思っています。「各自、自分の仕事で使えるところを探してみて」という進め方は、たいてい動きません。探す時間が業務の中に無いからです。
代わりに、業務をひとつ名指しします。会議の議事録を整えるところ、問い合わせへの返信の下書き、報告書の構成づくり。何でも構いませんが、全員が同じひとつの仕事で使う形にします。同じことをやっていると、うまくいかなかったときに聞ける相手が社内にいます。ばらばらに試していると、それができません。
何を選ぶとよいか迷う場合は、中小企業が生成AIを使い始めるとき、最初に決めるとよい3つのことに、減らしたい時間から選ぶ考え方を書いています。
そして、どの業務にするかは経営者か責任者が決めたほうが早いです。現場に選ばせると、失敗したときの責任を気にして無難なところを選びがちで、結局は効果が見えません。
使っている人の画面を見せるのが早道です
定着しないと分かったとき、研修をもう一度やる案が出ることがあります。ただ、量を増やすより効くやり方があります。すでに使っている社員の方に、実際のやり取りを画面のまま見せてもらうことです。
うまく使えている人は、たいてい一往復では終わっていません。返ってきた答えに「もう少し短く」「この部分だけ詳しく」と足していきます。この往復のしかたは、説明されるより見たほうが早く伝わります。
そのうえで、よく使う指示の出し方は文章にして共有しておくと、全員の出力がそろってきます。書き方がそろうと、確認する側の手戻りも減ります。ここまで来ると、使う人が自然に増えていきます。
グレジャーでは岡山を中心に、こうした定着の段階からのご相談もお受けしています。金融機関や商工会議所などで、その場で手を動かしていただく形のセミナーや研修にも登壇しています。導入したものの止まってしまった、という段階で構いませんので、まずは現状をお聞かせください。

