Excelでの管理がそろそろ限界かもしれない、というご相談をよくいただきます。ただ、話を伺っていくと、本当に困っているのはExcelそのものではなく、その周りで毎週くり返している手作業であることがほとんどです。この記事では、限界のサインの見分け方と、次に何をするかの順番を整理します。

Excelが悪いわけではありません

「脱Excel」という言葉がよく使われますが、この言い方はいささか乱暴だと思っています。

Excelは、表を作る道具としては本当によくできています。思いついた形をその場で作れて、誰のパソコンにも入っていて、追加の費用もかかりません。中小企業の業務が回っているのは、Excelのおかげという面が確実にあります。

問題が起きるのは、Excelが**「一時的に考えるための道具」から「業務の土台」に変わったとき**です。土台にするつもりで作られていないものを土台にしているので、あちこちに無理が出ます。無理の出方を知っておけば、いつ手を打つべきかが分かります。

限界のサインは、ファイルの重さではありません

よく言われるのは「ファイルが重くなったら」ですが、実際に危ないのは別のところです。次のどれかに当てはまったら、そろそろ考える時期です。

  • 毎週おなじ加工をくり返している。データを取り出して、貼り付けて、並べ替えて、同じ形に整える
  • その人しか作れない。関数やマクロを組んだ人がいないと、誰も直せない
  • 同じファイルを複数人が触りたくなる。「最新版どれ?」が出はじめる
  • 過去が残らない。毎回上書きするので、去年の同じ時期と比べられない
  • 転記が発生している。システムから出したものを、人が別の表に入れ直している

このうち**「毎週おなじ加工をくり返している」と「過去が残らない」の2つ**が、いちばん静かに損をしています。忙しさに紛れて、問題として認識されないまま何年も続くからです。

毎週2時間以上かかっていた準備が、30分ほどになった例

多店舗展開されている小売業をご支援したときの話です(内容は差し支えのない範囲に整えています)。

商品の追加発注や値下げ、店舗間の移動を、担当の方が毎週判断されていました。その判断材料をそろえるために、販売管理システムからデータを何度も取り出し、そこから判断用のExcelを毎週手で組み立てる、という作業が発生していました。準備だけで、毎週2時間以上です。しかも毎回上書きしていくので、去年の同じ時期と比べたくても実質できない状態でした。

ここに、既存システムから出てくるExcelをそのまま読み込んで、判断に必要な形に自動で組み立てる仕組みを用意しました。準備の時間は30分ほどになり、毎週のデータが自動的に積み上がるので、過去との比較もできるようになりました。

やめたのはExcelではなく、毎週くり返していた手作業でした

この例で大事なのは、Excelを1枚もやめていないことです。

入力に使うのは、既存システムが出力するExcelのままです。出てくるものもExcelです。販売管理システムにも手を入れていません。変えたのは、その真ん中にあった「人が毎週おなじ手順で組み立てる」という部分だけです。

困りごとの正体が「毎週くり返している手作業」なのであれば、そこだけを外側から解くことができます。既存のシステムを尊重したまま、その周りを整えるやり方なら、費用も期間も現場の負担も、桁がひとつ変わります。

もうひとつ副産物がありました。それまで判断の基準が担当の方ごとの経験と勘だったところに、共通の目印が入ったことです。人によって見方が違うこと自体は悪くありませんが、土台がそろっていないと議論もできません。手作業をなくすと、その先の話ができるようになります。

次の一手には、4つの段階があります

Excelの次に進むとき、選択肢は大きく4つです。下にいくほど費用も期間も大きくなります。上から順に検討して、足りなければ次に進むのが安全です。

段階 やること 向いている場面
1. クラウドの表計算に移す 同じ表をそのままGoogleスプレッドシート等に置く 複数人で同時に触りたい、最新版がどれか分からない
2. 外付けで自動化する 既存の出力を読み込んで、加工や集計を自動化する 毎週おなじ加工をくり返している
3. 業務アプリにする 入力・一覧・権限の形を持つ小さなアプリにする 入力の間違いを防ぎたい、履歴を残したい
4. パッケージや開発 業務ソフトを導入する、または作る 業務そのものを作り直す必要がある

多くの中小企業の困りごとは、1と2で相当なところまで解決します。3が必要になるのは、扱う人数が増えて入力の統制が要るようになってからです。

本筋は基幹システムの見直し。ただし、順番があります

抜本的に直すなら、基幹システムそのものを見直すのがいちばん効きます。データが最初から使える形で貯まり、手作業の多くが要らなくなります。そこを目指すこと自体は、正しい方向です。

ただ、基幹システムの入れ替えは費用も期間もかかります。それ以上に大きいのが、社内から出す人手です。何をどう変えるかを決められるのは現場の方だけで、その方は今の業務も抱えています。片手間にできる仕事ではありません。

そして検討している間も、現場は毎週回り続けます。

ですから、順番としてはこう考えています。まず目先の手作業を軽くして、時間を作る。その時間が、基幹システムをどうするかを考えるための余力になります。 応急手当てで終わらせるのではなく、手当てで余力を作り、その余力で中長期の見直しを進める。この順で進めるのが、いちばん現実的だと感じています。

先に挙げた4段階でいえば、1と2は数週間から数か月の話、4は年単位の話です。時間の単位が違うものを、同じ土俵で比べる必要はありません。

残していいExcelもあります

最後に、これはやめなくてよい、というものも書いておきます。

一度きりの試算、その場で考えるための下書き、少人数で完結していて誰も困っていない表。こうしたものは、Excelのままがいちばん速いです。全部を作り直す必要はありません。手を入れるのは、毎週くり返しているところ、その人しか触れないところ、過去が残らないところだけで十分です。

グレジャーでは岡山を中心に、こうしたExcel業務の棚卸しと、外付けでの自動化をお手伝いしています。いまの表をそのまま見せていただければ、どこから手を付けるとよいかをご一緒に整理します。まずは現状をお聞かせください。