DX認定について調べていると、支援会社の案内ばかりが出てきます。実際のところ、どのくらいの手間がかかって、取ると何が変わるのか。グレジャーは2024年11月に取得し、いま更新の時期を迎えました。当事者として分かったことを書きます。
DX認定は無料で申請できる国の認定制度です
デジタルガバナンス・コードという国の指針に沿って、DXに向けた準備が整っている事業者を国が認定する制度です。事業者の規模を問わず、法人でも個人事業主でも申請できます。
ここは誤解されやすいところなので先に書いておきます。DXがすでに進んでいることを証明する制度ではありません。認定されるのは、これから進めるための方針と体制が整っているかどうかです。実績の量を問われるわけではありません。
申請手続きにも、認定の維持にも費用はかかりません。有料なのは、書類の作成を外部に頼んだ場合の支援料だけです。つまり自社で書けば、費用はゼロで取れます。
申請はIPAの「DX推進ポータル」からウェブで行います。GビズIDが必要なので、まだ持っていなければそこから始めることになります。認定の有効期間は2年です。
補助金の申請で加点されることや、金融面で優遇の対象になることもあります。ただ、そこだけを目当てにすると割に合わないと思います。理由は後で書きます。
審査そのものは厳しくありません
ここは誤解されやすいところです。落とすための審査ではありません。
申請内容に不備があれば、事務局からメールで指摘が来ます。指摘された箇所を直して再申請すれば、通常は認定されます。何度もふるいにかけられるようなものではなく、指摘に対応していけば普通に取れるという感覚です。
ただし、結果が出るまでには時間がかかります。標準処理期間は60営業日で、カレンダー上では3か月ほど見ておく必要があります。補助金の締め切りに合わせたいといった事情があるなら、逆算して動くことになります。
壁は申請の前にあります
では何が大変なのか。申請するより前の準備です。
DX認定では、経営ビジョンやDX戦略、推進体制、情報処理システムの整備方針、セキュリティ対策といったことを申請書に書きます。そしてここが重要なのですが、これらは申請の時点で自社のウェブサイトなどに公表済みである必要があります。「これから公表する予定です」では申請できませんし、社内限りの資料でも通りません。
つまり順番はこうなります。
- 自社のDX戦略などを文章にする
- それを自社のウェブサイトで公表する
- そのうえで申請する
グレジャーが一番時間を使ったのは、1と2です。書式を埋めるだけなら慣れていれば数日ですが、手が止まるのはそこではありません。自社が何をどうデジタル化していくのかを、人に見せられる文章にするところで止まります。
頭の中にあるものと、外に出せる文章は別物です。しかも公開するとなると、曖昧なところが自分で気になります。「なんとなくこうしたい」を「こう書いてある」に変える作業が、この制度の実質的な中身でした。
書類作成を外部に頼めば早く出来上がりますが、この部分だけは代わりにやってもらっても意味が薄いと感じています。自社の戦略なので、社内で決めるしかありません。
DX推進指標は必須ではありません
申請では、自社の課題をどう把握したかを書く項目があります。ここでDX推進指標を使うか、独自の方法で把握するかを選べます。DX推進指標は経済産業省がまとめた自己診断のしくみですが、使わなければならないものではありません。
グレジャーは使っています。ただ正直なところ、設問の数が多いわりに、小規模な事業者には当てはまらない項目が少なくありません。組織や体制を前提にした問いが多く、少人数の会社が無理に埋めようとすると手間だけが増えます。
使う場合は自己診断を実施して結果を提出しますが、中身が審査されることはありません。実施したかどうかだけを見ています。点数を競うものではないので、そこで身構える必要はありません。
自社の課題を自分たちの言葉で整理して書けるなら、独自の方法で申請して差し支えありません。
取って何が変わったか
正直に書きます。認定を取ったから仕事が増えた、ということはありません。
変わったのは2つです。
ひとつは、対外的な説明が楽になったことです。ロゴを名刺やウェブサイトに載せられるので、初対面の相手に取り組みの姿勢が伝わります。これは小さくない効果です。
そしてもうひとつが、いちばん大きかったところです。公表が要件になっているおかげで、書いたものを外に出さざるを得ませんでした。社内資料なら曖昧なままでも通りますが、公開するとなるとそうはいきません。この強制力は、制度の副産物として効きました。
更新は2年ごとにあります
認定は2年で期限が来ます。継続するには更新の申請が必要です。受付は次の適用日の4か月前から始まり、申請期限は60日前までです。うっかりすると間に合わないので、認定を受けたときに期限を控えておくことをお勧めします。
このとき、当時書いた戦略をそのまま出すわけにはいきません。2年前の内容が今の実態と合っているかを見直すことになります。グレジャーも今年、戦略を改定して公表し直しました。
面倒といえば面倒ですが、2年に一度、自社の戦略を強制的に見直す機会があると考えると、悪くない仕組みだと思っています。放っておくと、こういう見直しは後回しになり続けます。
これから始める会社こそ向いています
冒頭にも書きましたが、DXが進んでいる会社のための制度ではありません。「うちはまだ何もやっていないから」と見送っている会社をよく見かけますが、それは逆です。
認定で見られるのは、これから何をどう進めるかという方針です。「これからやるぞ」という段階の会社こそ、取る意味があります。方針を決めて、文章にして、公表する。この一連の作業が、そのまま最初の一歩になるからです。何もない状態から始めるほうが、むしろ素直に書けることもあります。
取引先や金融機関に取り組みを説明する場面が多い会社にも向きます。
一方で、認定を取ること自体が目的になっている場合は、あまりお勧めしません。審査が厳しくない以上、体裁を整えれば取ること自体はできます。ただ、その戦略は公表されて残り、2年ごとに見直しを求められます。中身の伴わないものを抱え続けるのは、かえって負担です。
セキュリティ対策についても記載を求められるので、そちらが手つかずであればまずそこからのほうが順番として自然です。
進め方に迷ったらご相談ください
繰り返しになりますが、申請は無料で、審査も落とすためのものではありません。書式も公開されています。材料がそろっていれば、自社で取れる制度です。
とはいえ、「自社のDX戦略を書いて公表する」というところで止まる会社が多いのも事実です。グレジャーは自社で取得して更新まで経験しているので、どこでつまずきやすいかは分かっているつもりです。
何をどう書けばよいか、そもそも自社に必要なのかといったところから、ご相談に乗っています。認定の有無にかかわらず、DXを何から進めるかという話としてお聞かせください。

