DX認定を取得しないのは損?隠れた価値と取得のポイント
「DXを推進する」というと、当初目立っていた「コンピュータ関連設備への投資」や「専門ツールやシステムの導入」などを連想する方も多いのではないでしょうか。「アレコレ買っても、そんなに効率が上がるのか、収益に差が出るのか」疑問に感じるのも、無理のないことと思います。
目立った取り組みが大々的に報じられる中で、小さな取り組みはどうしても見落とされがちです。もっと小規模に、もっとお金をかけないところから効果を生み出すDXも、GREATJOURNEYでは一緒に取り組んでいます。小さな取り組みを重ねていくことで最終的に大きな変革となり、DX=デジタルトランスフォーメーションされた状態となります。
この記事では、手数料ゼロで申請できる公的認定制度「DX認定」について説明します。DXを進めたいとお考えのときに、ロードマップづくりとしても、最初の取り組みとしておすすめです。ぜひ最後まで読んで、参考にしてください。
DX認定って何?
DX認定は、DX推進の準備が整っていると認められた企業を、国が認定する制度です。
「準備が整っている」と判断するための項目は、経済産業省がとりまとめた「デジタルガバナンス・コード2.0」が元になっています。現時点で、DX(デジタル化・IT化など)が進んでいなくても申請できます。
DX認定は経済産業省から認定されますが、申請や審査、結果の通知はIPA(独立行政法人 情報処理推進機構)のDX認定制度事務局が対応しています。
DX認定の対象
DX認定は、個人事業者・法人を問わず、すべての事業者が申請できます。
法人には一般の企業だけでなく、公益財団法人なども含まれます。
DX認定の申請方法
自社の状況が申請要件を満たしていれば、申請に必要なのは書類一式の提出のみです。申請や取得に手数料はかかりません。
- 認定申請書(指定様式:Word形式)
- 申請チェックシート(指定様式:Excel形式)
- 設問(5) の取組 (課題把握) に関する証跡資料
※以下3点のいずれか- 自己診断結果入力サイト(DX推進ポータル内)からの入力 ※自己診断結果に対するフィードバックあり
- 自己診断結果記入済のDX推進指標フォーマット(Excel形式)
- 課題把握の結果が分かる資料(電子ファイル/形式自由)
- 補足資料(形式自由・圧縮ファイルでの提出も可能)
上記のうち、自己診断結果を作成する「DX推進指標」については、以下の記事にまとめてあります。ご参考にどうぞ。
https://greatjourney-sylb.com/blog-dx-indicators
Webサイト「DX推進ポータル」にログインすると、提出用のページへの案内があります。
Q.DX推進ポータルにログインするには?
DX推進ポータルへのログインには、無料で作成できるgBizIDが必要です。gBizIDには「プライム」と「エントリー」の2種類あります。基本的には補助金などの申請にも使えるgBizIDプライムがおススメです。
ページ内の案内にしたがって、ファイルを送信すれば完了です。期日も特に設けられていないため、いつ申請しても受付されます。
DX認定の認定基準
DX認定の認定基準は経済産業省令に定められています。
申請様式にもあるとおり、「情報処理の促進に関する法律施行規則第41条」で述べられています。一部を要約してご紹介しましょう。
- (取締役会などの)意思決定機関の決定に基づいた、企業経営・DXのビジョンを決定し、公表していること
- (取締役会などの)意思決定機関の決定に基づいて、企業経営・DXの戦略を決定し、公表していること
- 戦略の達成状況にかかる評価・指標を決定し、公表していること
- 戦略推進の責任者が、そのために必要な情報発信を行っていること
- 戦略推進の責任者が、会社で利用する情報処理システムの課題を把握していること
- サイバーセキュリティ対策を策定・実施していること
- 法令に違反する重大な事実がないこと
DX認定の申請書は、上記の各項目に沿った内容になっています。申請書の各欄に対応する内容が、しっかりまとめられていれば問題ありません。
DX認定の有効期間
DX認定には2年の有効期間があります。更新する場合は、2年が経過する日の60日前までに、認定更新申請書を送信します。
申請時に用意する申請書やチェックシートは、ほぼ同じ内容の項目が書かれています。2年弱で変わった部分や更新された目標などを修正する必要があるでしょう。
社会や技術の変化に合わせて、DX認定に関わる制度が刷新されることもあります。最新の情報を早めに確認してから、更新申請を行いましょう。
DX認定を受けて得られる4つのメリット
DX認定は申請の過程から認定後を含め、合わせて4つのメリットがあります。
- 取得の過程で、業務フローなどの見直しができる
- 経営理念を再確認し、目標と課題の共有・意思統一がはかれる
- ロゴマークでアピールでき、信頼性UP・人材確保につながる
- デジタル関連投資の負荷を軽減する各種支援措置が受けられる
DXでよく挙げられる「見直し・改善」の他にも、社内統制の向上や対外的なアピールなど、多方面に効果があります。一つずつ説明していきますね。
1.取得の過程で、業務フローなどの見直しができる
DX認定を取得するためには、DX戦略の策定が必要になります。経営者の想いや現場の課題などを言語化して、将来像を明確にするためのものです。
その過程で、現状の業務フローやシステム化されている領域などを資料化し、DXを通してより優れた業務フロー、より効率的なシステム化領域などへ検討・改善していきます。
普段の業務で把握している課題も、言語化し、記述していくことで明確になっていくでしょう。「DX」という新たな視点・角度から光をあてることで、今まで気づかなかったアイデアが出てくることもあります。
2.経営理念を再確認し、目標と課題の共有・意思統一がはかれる
申請要件の一つとして、「対外的に発信していること」という条件があります。またこの発信には、「経営陣による承認を得ている」必要があります。
取得の過程を通じて、経営理念の再確認が行えます。これまでに明確にしていないのであれば、改めて策定するチャンスです。自社の将来像を描き、社内外へ提示することで、全社での目標と課題の共有・意思統一が図れます。
経営理念を明確に掲げていても、従業員がそれぞれの仕事に打ち込む中で、うまく浸透しないこともあります。DX認定申請の流れに沿えば、少なくとも2年おきに考える機会が作れるので、振り返りの良いタイミングともなるでしょう。
3.ロゴマークでアピールでき、信頼性UP・人材確保につながる
DX認定を受けると、指定のロゴマークをPRに使用できます。
- ロゴマークの活用で、視覚に訴えたアピールが簡単にできる
- デジタル環境への対応や、未来志向・長期的な視野をもつアピールになる
- アナログへ拒否感の強い世代ので人材確保のチャンスが増える
- 現状ではまだ希少性があるため、「XX業種でYY市の企業として初めてDX認定を取得」などパブリシティ獲得につながる
DX認定のロゴマークは、名刺やWebサイトなどで広報活動に活用できます。認定されたら、積極的に使っていきましょう。
特に若手の人材確保に悩む企業においては、強力な助っ人となってくれるでしょう。アナログ色の強い職場は、デジタルネイティブ世代から敬遠される傾向があります。DXに取り組み、認定を受けることで、「この会社は、デジタル化の進む社会に適応していく意思がある」ことを示し、共感と安心を与えやすくなるでしょう。
4.デジタル関連投資の負荷を軽減する等各種支援措置が受けられる
DX認定を受けることで、国からの金融面での支援策を受けやすくなったり、優遇措置を受けられたりします。
- 日本金融公庫から、設備投資などに必要な資金について、利率が4割程度(0.85%)になる
- デジタル関連投資に対し、税額控除(5%または3%)もしくは特別償却(30%)措置が受けられる
- 「デジタル人材訓練」の要件を満たすことで訓練経費(最大75%)や訓練期間中の賃金の一部に対して助成を受けられる
こういった支援も活用しながらDXを推進していくことができます。
DX認定の過程で発生する2つの壁
DX認定の申請に取り組むために、避けて通れない困難が2つあります。
- 準備のため、関連するビジョンや方針を策定・公表する必要がある
- 2年ごとに更新のための業務が発生する
一つは、申請の準備によって生じる業務のうち、やや手間のかかる業務です。もう一つは、先ほども挙げた認定申請の更新にかかる業務です。それぞれについて、詳しく説明します。
1.準備のため、関連するビジョンや方針を策定・公表する必要がある
DX認定において、ビジョンや方針の公表は必須項目となっています。
小規模な店舗や個人事業の場合、融資の資料として作成することはあっても、公表していないことがほとんどです。また、内容の面でも「経営方針」「DXの方針」「体制の提示」など相互に関連する点が多いので、事業全体を見渡しながら矛盾なく整えるには、じっくり腰を据えて取り掛かる必要があるでしょう。
公表手段として想定されているのは、企業ホームページへの掲載です。企業ホームページ内からリンクでつなぐなど、客観的にアクセスできる状態にしておきましょう。その他にもレポートとしてステークホルダーへ向けた、対外的な公表を行っていることが確認できれば問題ありません。
なお、チェックシートの項目の一つとなっている「(5)(中略)課題の把握」では、別途推進されている「DX推進指標」によるDX診断の結果を活用できます。ビジョンや方針の策定とも関連しており、認定の申請に役立つので、DX診断も一度行っておくことをおすすめします。
DX推進指標、DX診断については、以下の記事にて詳しく説明してあります。
https://greatjourney-sylb.com/blog-dx-indicators
2.2年ごとに更新のための業務が発生する
DX認定の有効期間は2年であり、以降も継続するためには更新申請が必要です。更新の内容は申請時と大きく変わりませんが、最新の状況に合わせて修正していく必要があります。
また、社会や技術の変化による影響を受け、基準となる「デジタルガバナンス・コード」自体が、変更されることもあります。実際に最新となる「デジタルガバナンス・コード2.0」が2022年9月に改訂されたことを受け、更新者も新基準での申請が必要となりました。
どうしても多少の手間はかかりますが、更新時の見直し作業も含めてDXを進める工程として意識しておくと良いでしょう。
DX認定申請は自社内で完結できる?
DX認定の申請を自社内で完結するのは、非常に困難でしょう。
申請書類の作成や関連する文書の整備といった、認定の条件それぞれを整備することは可能です。しかしながら、DX認定の継続と更新、ひいてはDXを会社全体で戦略的に進めていくには、より専門性の高い人材が必要になります。
DX認定を更新していくためには、DXの戦略を内部で進めることと同時に、その結果を客観的に分析しなければなりません。DXの分野は常に新しい情報にあふれているため、当初に立てた計画よりも新たな手法・ツールが適している場合もあります。
長い目で見ながらDX人材の確保や育成に取り組んでいくのも、DXを進める上で大事な視点です。専門のチームを設けられるような、一定以上の規模の会社であれば、有用な施策となるでしょう。雇用できる枠に余裕を持ちにくい中小規模の企業であれば、外部のサービスを頼る方が近道かもしれません。
グレジャーの『DX認定サポート』
グレジャーでは、DX推進の伴走者として、DX認定取得のサポートを行っております。
システムエンジニアの経験をもとに、中小企業診断士の目線で、貴社にとって最適となるようお手伝いいたします。DX診断結果の作成やDX認定の更新についてもお任せください。
グレジャーは岡山を拠点に、瀬戸内海周辺の地域でみなさまのサポートをしております。ぜひお気軽にお問い合わせください。